アトリエの建築と庭
アトリエは、八ケ岳の東に広がる標高1,500mの林の中にある。このあたりは、50年前まで牛の放牧地だった。
この土地に出会ったのは、2009年のこと。
もみの木、白樺、カラマツ、コナシなどの林の中に、山野草が顔を見せ、平坦で明るく、毎日でも散策したくなるような場所だった。
設計は、新納淳弘氏に依頼。その10年前に、東京の自宅の設計を渡辺武信設計室に依頼した際の、設計担当だった方である。
アトリエの広さは40㎡でしかないが、絵の展示室と、写真の展示室の2つがある。2つのスペースは、3段の階段でつながっていて、小さな建物に立体感をもたせている。絵の展示室には、縦横2mの大きなピクチャーウィンドウをとり、写真の展示室では、木々の緑が眼前180°に広がるようにした。
写真の展示室にある本棚は、このアトリエのライブラリー。窓際には大きなデスクがあり、そこはライブラリーの本を見て頂くスペース、そして私のワークスペースになっている。
庭については、自然そのままにと思っていたが、回遊出来る道をつくれば、もっと楽しく散策できるのではと考えた。株式会社暖壇の若林氏に、林の手入れと、散策のための道づくりをお願いした。ウッドチップを敷き詰めた道は、絨毯の上を歩くような心地よさだ。
アトリエの建物が出来上がってすぐ、キツツキにいくつもの大きな穴をあけられてしまった。静かな林の中に、侵入者が現れたと思われたのかもしれない。しかし今、このアトリエの建物は、たくさんの鳥や、毎日のようにやってくる鹿、リス、ウサギ、タヌキと、うまく共生しているように見える。